2019-12-12 19:00-20:30
みなさんこんにちは。今回は、前回の作品発表をもう少し深く講評して行きたいと思います。
人物、生き物が被写体の場合
人の表情、仕草、ポージングなど、その人、その生き物しかできないものがいくつもあります。また、どう撮るかということにもよりますが、その中心となる被写体を生かすためには、場所選びも大事なのです。
今回の作品で言うと、「野球部員の表情の瞬間」をとらえるタイミング重視の作品。そして「愛犬+ロケーション」という難関なものです。
人物の表情を捉えた作品を撮るにあたり注意したいことは、人数の多い野球部員たちの大切な顔が切れてしまわないように若干余裕を持ったフレーミングにしましょう。
愛犬とのコミュニケーションがバッチリでした。まずロケーションを決めましょう。その場所のどこに犬が来て欲しいのかを考えます。そうすると、完成度の高い絵になると思います。
紅葉など風景の場合
クローズアップ
クローズアップでは、葉の品質が問われます。良質の葉を見つけなければなりません。または、ユニークなもの、目を惹くもの、クローズアップに値する美しさなのかどうかを吟味して撮影しましょう。
ただ、良質といっても、枯れたものだって良いのです。タイトルと一致していれば。葉の状態が枯れているのに「紅葉」とタイトルをつけると、人はどう感じます?「枯れてない?」と思うはずです。だったら、「晩秋」とか「冬の身支度」とか、冬に近づいている状態の秋であることを表現する言葉を考えるのが良いですね。
また、クローズアップはピントも目立つため、ピンボケやブレがあるとすぐに発見されてしまいます。
そこは、ほとんどの方が今回クリアしていたと思います。
標準
標準画角で撮影された作品は、被写体と背景とのバランスなどが問われてきます。また、色合いなども重要です。人間の見た目で感じるくらいのフレーミングになるので感覚的には受け入れやすいのですが、構図やバランスに少し気を遣います。
広角
広角な構図は、難しいです。不要なものが入ってきたり、必要なものが大きく写ってくれなかったり。ダイナミックさを出したいのにうまく表現できないこともあり、あの手この手で一生懸命良いアングルを探さなければなりません。
ただ、どう頑張ってもうまく入らない場合は、その場所が広角には適していないかもしれないと気がつくことも大切です。ある程度撮影したら、見切りをつけて場所を変えましょう。または、広角をやめてレンズを変えてみるというのも手です。
写真選びの難しさ
写真を選ぶのって難しいですよね。。。あれもいいし、これもいい。というパターンと、あれもこれもいまいちというパターンと二つあると思いますが、迷ってしまいます。
わたしは、写真を並べて好きなものを選んで行って、好きな写真が3枚くらいになった時、タイトルを考えます。タイトルが思浮かばないものは、作品にしない。
その写真で、何を伝えたいのかということを自分の胸に手を当てて考えると自然と言葉が湧いてくることもあります。
タイトルによって変化する写真の印象や見方
写真一枚で、メッセージを伝えるのは難しいです。タイトルをつけるというのは、自分の写真に込めた想いを捕捉できるということです。
バカ売れした商品の中でも、ネーミングで売り上げが倍になったというような話をよく聞きませんか?
人間は言葉でコントロールされているということがよくわかります。写真や絵との一致性、言葉の音(韻を踏む)、響きの良い言葉。そういうものが人間は好きなんですね。
この写真にタイトルをつけるとしたら
何が思い浮かびますか?
「エスパーチャイルド」とか、超能力的なタイトルだったら見た人がどう思うか。人を笑わせたかったら、案外良いと思われるのか、もっとましなタイトルつけてあげてと思われるのか。
「枯葉アソビ ナウ」などと、ツイート的なタイトルだと写真が軽々しくなります。
言葉の力はすごいです。
この写真のタイトルは、決まってないです。なんとなく撮った一枚だから。
ネイチャーフォトの難しさ
ネイチャーフォトというのは、難しいです。植物も生き物であるし寒さや天気など環境によって全く違う状態に変化します。自然界という広いフィールドの自然現象は人間がコントロールできるものじゃない。天気は地球上で起きている事象であるし、操作できませんよね。そのため、あるタイミングに偶然恵まれたものだけが撮影することができる場合もあれば、通いつめて見張っていることでそのタイミングを得られる場合もあります。
いまはインターネットで情報をいち早く入手できる時代になりましたが、銀塩時代の写真家たちはなんども足を運び今より何倍も重たい機材を背負って自然をとらえてきたのです。
そう考えると、楽に上手に写真が撮れるようになったラッキーな時代だということは知っておきましょうね。
山岳写真家 白籏史郎氏
私の尊敬する写真家はたくさんいるのですが、日本の山岳写真といえば白籏史郎氏でしょう。もともとは、私の兄が大ファンでたくさん本を持っていました。ど迫力の山岳風景を切り取りどうしてこんな風に写せるのだろう。と、興味を持って調べていたところ大判カメラを使っていたということを知りました。私は中判サイズしか使ったことがないのでエイトバイテンなどを使う機会があったらぜひ作品を撮ってみたいなと思いました。でも、その機材を支える三脚やカメラレンズなどの重量と、コストを考えると、金銭的に苦しいです。。。そして、重たいです。。。
自然は美しい!私はそのたぐいなき美と力を私の写真で万人が共感するものにしたいと努めてきた。人工の色や奇を衒ったひとりよがりの写真は、それを創った神への冒涜である。私はいつもその神への感謝と、歓びを以って大自然に対している。 白旗史郎
http://www.shiro-shirahata.net/garalley.html
彼の写真を見ると、写真に命をかけてる感じが伝わってきます。
昔、山岳月刊誌に白籏史郎氏の連載が掲載されていたものの中に、こんなエピソードがあった。
まだ彼が弟子だった頃、荷揚げを手伝っていて、日の出に間に合わないから「行け、史郎!お前が撮ってこい!」と師匠にいわれ、何十キロの機材を担いで駆け上がり八ヶ岳から撮影した富士山の日の出写真。あれは印象的でした。かなりの健脚だったことや師匠に信頼されていた様子が伺えます。
興味がある受講生の方は、お声掛けください。私が持っている白旗氏の本をお貸しします。とても勉強になると思います。
アドバイスのまとめ
1.写真は、縦と横の2パターン撮っておく。
2010年撮影 『荒俣峡の紅葉』
2014年撮影 『神殿へ続く紅い絨毯』
2.迷ってないでとにかく撮る
天気が悪くても、撮ってみましょう。雰囲気のある写真になるかもしれません。撮ってみないとわかりません。
3.トリミングは後から
ドアップで撮りすぎると、トリミングどころか、切れちゃったら何もできません。だからといって、広角で撮ったものをトリミングするというのは美しい写真になりません。ちょっと縁を残そうかなという意味です。ただ、完璧な構図を見つけた場合は自分が思うように撮りましょう。
4.自分が良いと思った写真を選ぶ
自分が気に入っている写真が撮れたら、誰に何を言われても気分が良いもんです。たとえ、褒められなくても。自分が撮りたかった、または撮れた写真の喜びは誰にも奪えないし、その喜びはあなた自身で創り出したあなたのものです。
5.写真をよく見てタイトルを決める
実際に写っている写真の状態をよく見ましょう。たとえば「秋色・秋空」という受講生の作品がありました。青空の中にもみじが三角構図で撮影されたシンプルな作品です。葉が枯れつつあったので、「秋空の下で」「枯葉と空のランデブー」とか、タイトルに工夫を見せることで作品としての質が上がることもあります。作品のマイナス点を逆手に取り、タイトルで強調することで作品を良い方向に引っ張れるのです。また、重厚感のある作品に軽々しいタイトルをつけると、勿体無い感じがします。言葉一つで、写真は良くも悪くもなるのです。写真と言葉の一致を意識して無難なタイトルをつけて見て、余裕があればそこから発展した言葉を考えていきましょう。ことばは無限です。たぶん。
個人的な感想
講座の中で扱った「構図」を上手に生かしている受講生が多かったと思いました。意識はしていなくても、自然に構図の安定感が出ていたり、ピントへの意識が高かったり、それなりの作品が多かったと思います。
少しずつ、「思いが伝わる!見せたくなる写真」が撮れつつあるのではないかと実感しています。撮ってきた写真を、早速見せたくなり始めていますよね?これは、少しづつ自信を持ってきたという事だと思います。
次回は
カメラの基礎を復習します。
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